ドラクエ9「ぬすむ」: 成功確率の「きようさ」との関係式についての検証
ドラクエ9の「ぬすむ」の、成功確率の「きようさ」との関係式についての検証。
「ぬすむ」を大量に実行したデータを、理論値と比較する。かなり、今更である。
関連記事
* ドラクエ9の「ぬすむ」は、レア判定が先である
* ドラクエ9の「宝箱ドロップ」の確率
結論
「ぬすむ」の確率の式は、大体正しい。
理論
成功確率 p = (512 + きようさ) * z / 256
ノーマルとレア、各々のpが存在する。パラメータ z は、モンスターごとに、ノーマルとレアについて定められている。盗賊の証がある場合は、pを2倍。
pには上限があり、ノーマルでは1/2、レアでは1/4。
(なお、この z は宝箱ドロップの確率かも知れない。この記事を参照)
与えられたpでレアの入手を判定し、失敗ならばノーマルの入手判定をすると考えられる。逆であるとの説もあるので、両方を調べる。
データ
解説は後回し
データ1出典: 2ちゃんねるスレッド「【DQ9】錬金レシピスレ 6品目」より投稿327
投稿者は73にも書いているが、データが独立では無いかも知れないので、より大きいサンプルであるこちらを採用。
データ2出典: DQ9 ドラクエ9 ドラクエナイン攻略「盗む確立検証」
引用元には相手モンスターが書いていないが、「皮のこしまき」と「ちからの種」なので、ブラウニーである。z はノーマルで 1/32、レアで1/256。
判定順がノーマル→レアの場合
ノーマル | レア | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | 差(単位σ) | χ² | 実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | (D - n)/σ | (D - n)²/σ² |
48 | 51.26 | 7.00 | -0.47 | 0.22 | 25 | 24.60 | 4.91 | 0.08 | 0.01 |
108 | 102.26 | 9.70 | 0.59 | 0.35 | 44 | 46.80 | 6.70 | -0.42 | 0.17 |
45 | 41.70 | 6.33 | 0.52 | 0.27 | 23 | 19.95 | 4.42 | 0.69 | 0.48 |
17 | 13.70 | 3.65 | 0.90 | 0.82 | 6 | 6.61 | 2.55 | -0.24 | 0.06 |
χ²: 2.37 (下側約3%)
ノーマル | レア | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | (D - n)/σ | (D - n)²/σ² | 実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | (D - n)/σ | (D - n)²/σ² |
109 | 109.39 | 8.62 | -0.05 | 0.00 | 15 | 9.30 | 2.99 | 1.91 | 3.63 |
57 | 53.93 | 6.68 | 0.46 | 0.21 | 6 | 5.52 | 2.32 | 0.21 | 0.04 |
51 | 48.18 | 6.36 | 0.44 | 0.20 | 2 | 5.01 | 2.21 | -1.36 | 1.84 |
26 | 38.07 | 5.70 | -2.12 | 4.48 | 4 | 4.28 | 2.05 | -0.14 | 0.02 |
χ²: 10.43 (上側約34%)
判定順がレア→ノーマルの場合
ノーマル | レア | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | (D - n)/σ | (D - n)²/σ² | 実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | 差(単位σ) | χ² |
48 | 50.19 | 6.93 | -0.32 | 0.10 | 25 | 25.63 | 5.01 | -0.13 | 0.02 |
108 | 98.73 | 9.53 | 0.97 | 0.95 | 44 | 51.13 | 7.01 | -1.02 | 1.04 |
45 | 40.78 | 6.26 | 0.67 | 0.45 | 23 | 20.85 | 4.52 | 0.48 | 0.23 |
17 | 13.54 | 3.63 | 0.96 | 0.91 | 6 | 6.85 | 2.60 | -0.33 | 0.11 |
χ²: 3.80 (下側約13%)
ノーマル | レア | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | (D - n)/σ | (D - n)²/σ² | 実ドロップ数 D | 期待値 n | 標準偏差 σ | 差(単位σ) | χ² |
109 | 104.58 | 8.43 | 0.52 | 0.27 | 15 | 13.67 | 3.62 | 0.37 | 0.13 |
57 | 52.90 | 6.62 | 0.62 | 0.38 | 6 | 6.74 | 2.57 | -0.29 | 0.08 |
51 | 47.86 | 6.34 | 0.49 | 0.24 | 2 | 6.02 | 2.43 | -1.66 | 2.74 |
26 | 37.48 | 5.65 | -2.03 | 4.12 | 4 | 4.76 | 2.16 | -0.35 | 0.12 |
χ²: 8.11 (下側約58%)
解説
データの各行は、引用元の各キャラクターに対応。順番は上からそのまま。
期待値は、たとえばノーマル入手判定が先の場合には、レアの試行回数は、(全試行回数 - ノーマル成功数)として計算した。つまり、レアの期待値は、( ノーマルの失敗の期待値 x レアの成功確率 ) ではない。
(D - n)/σ は実ドロップ数と期待値の差を、標準偏差で割ったもの。これを見ると、多くは±1よりも小さい。判定順がどちらのケースも、2を超えたマスが一つだけある。
(正規分布で)差が±2σ以下になる確率は95%くらいだから、これを見ただけでも一致が良い事は分かる。
χ²の意味は、たとえば「下側3%」は、(正規分布で)「(D - n)²/σ² の8つの和がxxx以下になる確率は、3%」という事。理論と実測値の一致は、とても良い。
(注: Pearsonのχ²は期待度数で割るが、それは「便利なニセモノ」であって、分散で割るのが正しいχ²である。)
統計学的な結論は、「理論値を否定する材料は見つからない」となる。もちろん、計算式の「きようさ + 512」の512と500の優劣なんてのは、これだけでは分からない。(というか、「ぬすむ」の大量実行からは現実的には無理。)
一方で、ノーマルとレアの判定の、どちらが先かは、今回調べたデータからでは判然としない。これについては、別記事「ドラクエ9の「ぬすむ」は、レア判定が先である」を見よ。(実のところ、リンク先も p の式の正しさの証明になっている。)
なお実際には二項分布であって、正規分布で近似できる条件は、「成功、失敗の期待値が、ともに1より十分大きい(までに、試行回数が多い)事」である。データ1の最後の行や、データ2のレアドロップは、解釈しない方が良いかも。
正確にはロム解析をするか、公式に出版してもらうのが良いのは、言うまでもない。